「ベイチン2004」報告

第2回チベット考古学・美術研究国際学会が中国社会科学院考古学美学研究所の主催で、北京市朝陽区の中国蔵学研究中心(チベット学センター)を発表会場として9月4日から7日までの4日間に亘って開催されました。

建物の外観

ハーンが社会科学院から招請されて発表するのは今回が始めてですが、過去に2度同じ会場で開かれた国際学会には参加したことはあるので、おなじみの場所でした。

以前来た時と比べてさらにさらに周りがどんどん都心化していくので驚いてしまいます。

そうそう。筋向かえにイトーヨーカ堂が出来てました。


発表の様子

今回の学会もドイツ・フランス・英国・アメリカ等各国からの参加者に混じって地元中国の漢人の学者や蒙古族や蔵族の研究者による発表がありました。日本からの発表者は私だけでした。

今回のハーンの発表は京都の宇治万福寺に所蔵される明時代の「カタ」(チベットモンゴル地域で使用される儀礼用のスカーフ)に関する発表でした。カタは日用品に属するものなので通常は保存されることなどなくこのような古いカタが保存されているのは異例に属するのです。このカタと同じ型紙を利用したと思われる清朝期の織物タンカと刺繍タンカが発表者の知るところではラサ・北京・台北・シスコと合計4点ありこれらが乾隆皇帝治下の同じ工房で制作されたのではないかという推測を発表しました。

今回の学会では考古学関係の発表も多くありました。

例えば、michael HENSS や李水先によるガーリ地方キュンルンの遺跡の調査報告や湯恵生による青海玉樹近郊で発見された吐蕃期の仏教摩崖などの発表は注目されました。さらに様々な地域で見られるチベット系の紋様の研究も多く興味深い研究が多数発表されました。自身がナシ族出身研究者の木仕華(ムシファ)のナシ族芸術のなかのキュンとガルーダの紋様の研究も興味深いものでしたし、バークリーの張衛とPeter Rasmussenによる「耳を共有する三匹の兎のモティーフ」の研究は特に面白く聞きました。

この紋様はモンゴル帝国時代に貨幣のデザインに取り入れられた為にヨーロッパにまで広く行き渡った事実を豊富な画像資料で語った大変説得力のある発表でした。

 

チベット仏教美術史ではいまや重鎮となった感のあるイタリアの Erberto Lo Bue は今回は様々な壁画の破損状況とその破損の進展、そして修復技術の稚拙さによるさらなる損壊等について警告を発する発表でした。

ところで、この蔵学研究中心にも小さな博物館が付属されていて、所蔵品のひとつである中央アジア様式で作られた絹織タペストリーを手に取ってみることが出来ました。


 

学会に参加していた故宮博物院の研究者の紹介で、今回特別に故宮の中の未公開の地域にある「梵華楼」という建物の中を見せてもらいました。

建物内部の写真は数年の内に公開予定だそうでカメラを持ち込むことも出来ませんでしたが、内部は清朝期のままに保存されていて、軸装タンカも仏像も仏塔もまさしく一級品で素晴らしいものでした。

細長い建物で1階に6部屋、その一部の部屋は真中が吹き抜けになっていて2階から1階が覗けるような構造です。1階の各々の部屋の真中には仏塔が1基づつあってそのまわりをタンカが埋めています。

2階の各々の部屋の壁には小さな枡状のスペースがあってそこに合計700体以上の高さ10センチほどの素晴らしい仏像が並べられています。早く公開されるべき資料だと思われます。まだまだこんな場所が故宮のなかにはいっぱいあるとのこと。ただただ感心するばかりです。

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