「ミヨッさんのダラムサーラずっこけ探訪記1」(三好孝さん)

ダヤンウルスの御意見番、枚方の三好孝さんが、日本に住むチベット人のノルブ(仮名)とその奥様(日本人)のモモエ(仮名)そして彼等の長男クリリン(もちろん仮名)の里帰りにくっ付いて、インドに行かれました。その旅行記が面白い!さあ、いっしょに楽しみましょう。


漆黒に近い闇の中に乏しい灯りが見える。デリー、インディラ・ガンディー国際空港である。

だが、なかなか空港から出られない。

関空からチェックインの際に渡される座席指定カードを、エア・インディアでは降機時に回収される。入国審査が始まったが、審査官が厳しいのか、あるいは審査窓口が四ヶ所しかないためか、はたまた満席状態であった故の殺到か。

インド人達がスイスイと出口に向かうのを横目で見ながらただじっと待つ。

ようやく鈍間な審査が終わり、パスポートに入国印を押して貰った。しかし、さぁーこれからが、また大変な手続きがある。

それは今日が2月3日の土曜日で、明日は4日の日曜日である。

当たり前のことだが、我々は此処では外国人だと云う事を思い知らされる。ドルが使えない!のだ。インドでは、インドルピーしか使えないのだ!顔も信用も、ゴールドJCBもゴールドVISAも、あるいはマスターカードも町中ではとんと通用しない(金持ちが行くとこは別だが)。

あるのは現金支払いのみである。両替えに走る!また長蛇の列だ!ノルブよ、俺のトランク、盗まれないように、よォ見張っとけよ!

並ぶ事、28分、ようやく私の番だ。100$札5枚が、6センチの厚さに変わった。

次にモモエの番だが、彼女は1,000$、チェンジするという。だが彼女は何度もインドにきているので、慎重だ。両替え札を出す。50$札2枚、20$札30枚、あとは5$と1$札で、100$札は出さない。

彼女、曰く。空港内は正規?の銀行で、両替えは正規の業務であるからにして、たとえ少額の紙幣であろうと、また其の枚数が多数であろうとも、拒否はしてはならないのである(当然だ)。逆にいえば、裏のヤミ金では、少額紙幣は拒否されるかレートが低くなるかどちらかだ。つまりUS100$札ならば、オールOK、ノンプロブレムなのだ。

モモエは、そういう点を熟知しているらしい。だが、相手もしたたか者だ。両替人の彼女は「980$しかない、両替書を書き換えよ」と、モモエに指図する。モモエ「そんな筈はない、良く数えろ!」と言う。両替人の彼女「間違いなく、980$しかない!」と言い、そんならそっちで数え直せ、とばかりに突き返す。

「この前といっしょや!20$パクられた!」モモエの怒り、天に突く。

この前とは、5年前、この両替え所で2,000$、両替えを依頼したところ、1,950$しかないと言われ、ひと悶着あったのだ。

つまり、両替するとき、手品のように1枚、テーブルの下にわざと落とすのである。「今度も同じ事をした、足元をさがせ!」と、チベット語訛りの英語(どんなんや)で言う。

しかし、両替人、こんなトラブルは頻繁にあるらしく、「嫌なら月曜日に市内の別の銀行へ行け」とばかりに、金を突き返し、涼しい顔である。モモエ、横にいる私に、不平を言うが、私自身も両替人のマジックを見破れないので、どうしようもない。

ノルブが異変に気付いて飛んでくる。オコウ(おしゃぶり)のクリリンは泣き出す。隣の列のチャイニーズ系統の団体は訝し気に覗き込みに来る。後ろに並ぶ欧米人は、早くしろと叫ぶ。もうパニックだ!空港の職員も飛んできそうな気配だ。

またモモエが叫んだ。日本人なのに、興奮すると、やたらと三重県訛りのチベット語(?)が出る。しかし何を言っているのか、私にはわからない。

パニックだ。パニックだ。

だが、私が一番心配するのは、私のトランクであり、ノルブモモエ夫婦の17キロオーバーで超過料金¥65,000円を支払ったトランクだ!

兎に角、「ノルブよ、持ち場に帰れ」と言う。

—— 2月3日24時37分、ようやく一日の終わりが見え始めた。—— モモエが折れた。モモエはしぶしぶ相手の言い分を呑んだ。

だが彼女は、したたか者だ。今度は受け取った札を、一枚一枚数え出した。これ以上、損!はしないぞと云わんばかりに。これには相手の両替人も、お手上げだ、とゼスチャーして、苦り顔のあきれ顔だ。やはり日本人妻は偉い。

かくして25時30分、ようやく空港の外に出た。

だが私は、二度目の驚愕をさせられた。

屋内の、あの険悪なムードより解放され、少しばかり心地よいそとの風を受けたのは、寸秒より短い瞬間だった。

この喧噪とムアァ〜とした異様な雰囲気はなんだァ?魑魅魍魎がいる!?

5メートル間隔にしかない20ワットの灯りでは、暗闇に手探り状態だ。その下に蠢いている、敗戦の闇市を思い出させる(話しが古すぎる)ような群れ集まる人々。私、三好に、15歳まで育った西成のアイリン地区を思い出させるに充分な光景だ。おまけに、ヌーとした牛の群れまで居る!

ワアァ〜〜、一塊の集団が此方に来る。1対2までなら、少林寺拳法4段、勝つ自信はあるが、あれだけ寄って来られたら、さすがの私も駄目かも知れない。

しかし、最後まで戦うぞ!—- こら止めるなノルブ、袖を引っ張るな—– なに?迎えの車が来た?馬鹿はやく言え!早く荷物を積め!疾風怒濤のごとく、ただ一目散に逃げるぞ!

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