台湾のCDショップに見るチベット密教ブーム(エンドウスミエさん)

台湾を旅行されたエンドウスミエさんが、台湾におけるチベット音楽のあれこれをレポートしてくださいました。


ゴールデンウィークに台湾を旅してきました。

台湾吉野屋

とはいうものの、TVをつければ日本の番組、町を歩いていても、店先に流れているのは宇多田や浜崎などのいわゆるJポップ。街角にはセブンイレブン、ファミリーマート、そして吉野屋。

本屋に入ればファッション関係の棚はほとんどが日本の雑誌で、CD屋に行けば日本の歌手のCDと日本のTVドラマのVCDが台湾のCD、VCDよりも多い・・・というような状況で、台湾は「旅している」という緊張感が全然ない外国なのでした。

なんというか雰囲気が大陸よりも香港よりも、ず〜っと日本に近く、通りは清潔だし、鉄道は定刻に発着するし、エスカレーターではキチンと右側に並ぶし、大声でワーワー話さないし、若者は礼儀正しいし、ある意味、日本人以上に日本人の美徳とされてきたことを守っているような感じさえいたします。

私は某外務大臣に言いたい、「日本がアジアの国々の中でお互いに理解しあえる本当の親友を得ようと思うなら、台湾をもっと大事に扱わんかい!」と。

「達頼六世情歌1」ダライラマ6世の詩に曲をつけたもの

さて、そんな台湾で実は今、チベット密教がひそかなブームなのであります。

元々、台湾とチベットは似たような境遇にあることもあって関係が深く、故宮博物館の中にもチベットの仏教美術品を展示する常設コーナーがあるぐらいなのですが(私が故宮に行った時にも、チベットのお坊さんが5、6人で見学に来られていました)、今、もっと身近なところでチベット仏教が浸透しつつあるのです。

というのは、チベットのお経が現代音楽風にアレンジされて、いわゆる「癒し系」の音楽として流行しているのです!

私が最初にそれを聞いたのは、台北のタクシーの中で、「なんか宗教音楽っぽい中国の歌が流れてるな〜」とボ〜ッと聞いていたら、突然「オ〜ムマニペメフ〜ム」という男女のコーラスが入り、思わず座席から転げ落ちそうになってしまいました。

若い運ちゃんによりますと、なんでも、渋滞でイライラしている時にこれを聞くと心が落ち着くんだとか。

高雄では、駅前の大通りに面した金石書店のCD試聴コーナーに「店長推薦」でチベット密教系音楽が3点も並べられておりました。注意して見ると「そごう」のような百貨店の中のCDショップにさえも「お経コーナー」がしっかりと作られていて、中国語やチベット語のいろいろなお経CDが種類豊富に並べられているではないですか!

中でも一番人気は、十一面観音の功徳があるという「大悲咒」で、アレンジの種類も多く、数あるお経音楽の中でも唯一シングル版が出されていました。チベット語の発音に漢字をあてた歌詞カードも付いていて、朝晩これを唱えるならば「心情愉快、万事吉祥」なんだそうです。ありがたや〜。私もさっそく購入して朝晩欠かさず聞いております。

でも、あれれ?よく聞いてみるとこの曲は、私が以前ネパールで入手したCD「TIBETAN INCANTATIONS」にそっくりじゃないか・・・ということで、元ネタはけっこう以前からあったみたいです。

でも、パッケージに「来台弘法ダライラマ 背景音楽」と書かれたシールが貼られていることから推測するに、このチベット密教音楽ブーム、先日のダライラマ来台の影響によるものなのかも・・・。

「梵唱大悲咒(新版)」エンドレスにくり返される声明が心地よい

ともあれ、チベット仏教がこのような形で台湾の一般の人々に受け入れられている
というのは、文化的になかなか興味深いことであります。

経済発展を成し遂げ、ほとんど日本と同じ水準で人々が物質的な豊かさを享受している台湾ですが、最近は不況による失業率の急増が社会問題となっています(日本のようなホームレスはまだいませんが)。また大陸との関係もあいかわらず先行き不透明です。このような不安な状況が、人々に「救済」のイメージを求めさせているのかもしれません。

また、日本ではオウム真理教の事件後、宗教に癒しを求めることがタブーになって、アロマテラピーやガーデニングといった「疑似自然」に癒しを求める傾向にありますが、台湾のお寺に行くと少なからぬ若者が熱心にお参りしている姿に驚かされます。

このような若者の「信心深さ」に現代音楽風にアレンジされたチベット密教音楽の「目新しさ」がハマったという事情もあるように思います。

はたしてこのチベット密教ブーム、「意味はわからないけど、なんとなく御利益ありそう」という段階を越えて、さらに教義的な部分にまで深められていくのか、そして今後も新しいチベット密教音楽の新曲が作られていくのか、台湾旅行に本屋巡りとCDショップ巡り、という新しい楽しみができたのでした。

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